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トランプ選挙部がどのようにして支持者からより多くの寄付金を集めたのか

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トランプ選挙部がどのようにして支持者からより多くの寄付金を集めたのか

2020年大統領選挙が後半に差し掛かるなか、トランプ選挙部は大きな問題を抱えていました。トランプは2017年に大統領に就任した直後から選挙対策部を立ち上げ、再選のために寄付金を集める活動をしていました。これは、これまでのいかなる大統領と比べても早くから再選のために活動していたことになります。

トランプ選挙部長らは「巨額の寄付金をあつめ、強力な組織を築いた」と自慢していました。一方で、早くから活動するということはその分人件費やオフィス費などもかかります。そのうえ、選挙部のスタッフらは寄付金を集めるための献金パーティーに出席するために各地に出張しましたが、内部では「寄付金で払われたバケーション」とも言われていました。

また、選挙部はトランプを喜ばせるために勝つ可能性が全くないワシントンDCで広告を打ったり、巨額の費用が掛かるスーパーボールでの広告を打ったりしていました。

こうして、集めた寄付金の約半分はさらに寄付を集めるための「活動」に使われ、一方で派手な活動を抑えて寄付金を集めてきたバイデン選挙部にすぐに追いつかれて追い抜かれました。

選挙終盤で最も資金を重要とするときに資金不足に陥ったトランプ選挙部は、ある決断をします。この決断は、トランプに忠実で彼を心の底から信じている支持者から、気づかれないように寄付金を巻き上げるというものです。



気づかない寄付

カンザスシティ在住で、ホスピスケアでがんと闘病していたステイシー・ブラットはお気に入りの保守系ラジオ番組、ラッシュ・リンボーでトランプ選挙部が寄付金を必要としていることを知りました。そこで、ブラットはかき集められるお金を集めてトランプ選挙部に寄付しました。1ヶ月たった1000ドルで生活しているブラットにとって500ドルというのは大金でしたが、敬愛するトランプのためになればと彼は寄付しました。

しかし、翌日には追加でさらに500ドルが引き落とされていました。来週にはまた500ドルが引き落とされました。こうして、彼が最初の寄付をしてから一ヶ月もたたないうちにトランプ選挙部から合計で3000ドルの引き落としがあり、残高不足でかれの口座は凍結され、光熱費や家賃も払えなくなりました。

ブラットは兄弟のラッセルに助けを求め、すぐに銀行に連絡を取って詐欺にあったと思うと伝えました。「あれは、詐欺かと思った」とラッセルは話しました。ステイシーは今年の2月にがんで死亡したので、兄弟のラッセルがニューヨーク・タイムズの取材に答えました。

しかし、ブラットは詐欺にあったのではありませんでした。ブラットがクリックしたトランプ選挙部の寄付ページの下の方に、すでにチェック済みのチェックボックスが二つあり、小さく「寄付金額を倍額にする」「毎週同額を寄付する」と書かれていました。そして、気づかずにこのチェックを外さずに次のページに行って寄付を完了してしまったのです。

太字で書かれている長文の下に小さく「毎週同額を寄付する」「追加で百ドル寄付する」と書かれている

同様のことは続発していました。カリフォルニア在住の78歳のヴィクター・アメリオはトランプに一回、990ドルを寄付したつもりでしたが、彼が気づいたときには口座から8000ドル近くがトランプ選挙部によって引き落とされていました。

銀行への苦情

一方の銀行やクレジットカード会社には詐欺にあったと思ったトランプ支持者からの問い合わせが殺到していました。彼らの問い合わせは大体こうです:トランプ選挙部に一回寄付をしたつもりだったのに、何倍もの額が引き落とされている。どういうことか。銀行側は対応に奔走しました。ウェルス・ファーゴ銀行で不正取引を担当する行員は「すごい大規模だった」と話します。同じく、キャピタル・ワン銀行の担当者は「パターンだった」と言いました。

ピーク時にはこれらの銀行での詐欺に関する問い合わせのうちの1-3%がトランプ選挙部についてのものだったようです。これは、トランプ選挙部の返金率からもわかります。

全ての選挙部は支持者が間違えて多く寄付してしまった場合や献金上限額を超えた場合などに返金をします。バイデン選挙部の「返金率」は2.18%程度でした。トランプ選挙部は、当初はバイデン選挙部とおなじ2.17%程度だったものの、このチェックボックスを導入してから返金請求が急増し、ピーク時の返金率は12%程でした。この返金額は合計で1億2000万ドルに達しました。これは、バイデン選挙部の返金額の6倍です。

返金をするといっても、多くの返金は選挙後に行われました。そして、返金は利子をつける必要がないので、トランプ選挙部は最も資金を必要としていた時期に実質的に無利子ローンを受けたことになります。


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