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ニューヨーク・ポストのハンター・バイデン「スキャンダル」

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ニューヨーク・ポストのハンター・バイデン「スキャンダル」
credit: Gage Skidmore

ニューヨーク・ポストというタブロイドが民主党大統領選挙候補、ジョー・バイデンが息子、ハンター・バイデンの写真、メールなどを投稿しました。ポストの記事は、ハンターが働いていた会社の役員がハンターを通してジョー・バイデンに会おうとしたとにおわせています。

Facebookはこの記事を拡散されづらくし、Twitterは当初はこの記事の投稿自体を禁止していましたが、保守派議員らが「検閲だ」と反発したのと、ジャーナリストらからのフィードバックもあり、投稿を可能にしました。なぜ、ソーシャルメディア会社がこのような積極的な行動をとったのでしょうか?

2016年、大統領選挙が終盤にさしかかったときに突如としてクリントンの選挙部長、ジョン・ポデスタのemailがWikiLeaksに投稿されました。これは元々別のemailスキャンダルでダメージを受けていたクリントン選挙部に深刻なダメージを与えました。後にわかったことですが、これはロシア政府諜報部がハッキングして入手したもので、ロシア政府がトランプを当選させるために行った干渉作戦の一環でした。

ソーシャルメディアも偽のアカウントやロシア政府関係者による政治広告などでこの作戦に利用されていたことがわかっています。今年もロシア政府はトランプのために選挙に介入しており、ソーシャルメディア会社は敏感になっていました。

 

この記事の背景

そのただなかに投稿されたニューヨーク・ポストの記事は見るからに怪しいものでした。バックグラウンドとして、バイデンが副大統領を勤めていたとき、彼の次男のハンター・バイデン(薬物中毒になったり、様々なビジネスを渡りあるいたりしていました)はウクライナのブリズマというエネルギー会社の役員をしていました。

さて、この会社は腐敗しているとして当時のウクライナトップの検事にあたる人物に捜査されていました。ところが、ウクライナ政府の半分がそうであるように、この検事も腐敗しており、ブリズマやその他捜査対象への捜査を一行に進めませんでした。そのため、当時の欧米諸国はウクライナ政府に圧力をかけ、この腐敗した検事を解雇して腐敗への捜査を行わせようとしていました。これには当時の副大統領、ジョー・バイデンもアメリカ政府を代弁して参加していました。

 

ニューヨーク・ポストの記事

以上は全てバイデンが副大統領であったときの話です。ニューヨーク・ポストの記事に話を戻します。この記事によると、2019年4月にデラウェア州のコンピュータ修理店にハンター・バイデンと思わしき人物が壊れたラップトップを修理に出しました。しかし、これを修理に出した人は受け取りに来なかったと店のオーナーは主張しています。さて、この店のオーナーはこのラップトップに「ボー・バイデン財団」(脳腫瘍で亡くなったバイデンの長男)のシールが貼ってあることに気づき、怪しく思ってFBIに通報しました。そうすると2019年12月にFBIから提出するように命令されましたが、FBIにラップトップを引き渡す前にハードドライブのコピーをとり、2020年8月にコピーをトランプの個人弁護士のルディ・ジュリアーニの弁護士に渡したそうです。

さて、ニューヨーク・ポストの記事によると、詐欺などで現在起訴されているトランプ政権の元ホワイトハウス首席戦略官スティーブ・バノンがジュリアーニがこのハードドライブのコピーを保持しているという情報を入手し、ニューヨーク・ポストに伝えました。ニューヨーク・ポストの連絡をうけたジュリアーニはハードドライブのコピーを渡したということだそうです。

以上をみると、この記事を主なソースはスティーブ・バノン(詐欺の疑いで起訴)とジュリアーニ(トランプの再選を有利にするために2人のウクライナ系アメリカ人と共にウクライナ政府にバイデンを捜査するように圧力をかけ、トランプが弾劾される原因を作った)であることがわかります。ちなみに、ジュリアーニに協力したウクライナ系アメリカ人レヴ・パルナスとイゴール・フルーマンは選挙資金法違反の疑いで現在公判中です。

ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルをはじめとするその他報道機関はただ一つとしてこのニューヨーク・ポストの記事の真偽を確認できませんでした。ニューヨーク・タイムズが関係者に取材したところによると、この記事を執筆したニューヨーク・ポストの記者、ブルース・ゴールドバーグも真偽を疑問に思っており、この記事の執筆者として自分の名前が掲載されることを拒否しました。

また、その他のスタッフもこの情報の真偽に疑問を思っており、出版することに賛成しなかったようです。10月11日に現在アドバイザーを務める元編集長、現編集長、デジタル版編集長の3者による会議が開かれ、元編集長の強い意向もあり、この記事が出版されることになりました。

彼らはこの記事の執筆者として名前を載せるように記者らに要求しましたが、この記事を執筆したゴールドバーグは名前載せることを拒否し、もう一人の記者も断ったため、副編集長のエマ-ジョー・モリスとガブリエル・フォンルージュという記者の名前を執筆者として記載しました。モリスはこの記事の以前は名前が載った記事が一つもなく、フォンルージュはこの記事の執筆にほとんどかかわりがなく、自分の名前が執筆者として記載されたことは出版された後に知ったそうです。

この記事の信ぴょう性

この記事にはハンター・バイデンの写真などが含まれていますが、これらの出所が本当にこの記事通りだという証拠は何一つありませんし、ハンター・バイデンとブリズマの社員とのやり取りも確かめられません。

このラップトップを受けたとったというコンピュータ修理店のオーナーはFBIに通報する前にハードドライブをコピーしたのか、通報した後にコピーしたのか矛盾する発言をしています。

このコンピュータ修理店オーナーの話を信じるなら、カリフォルニア州在住のハンター・バイデンが壊れたコンピュータをわざわざデラウェア州のコンピュータ修理店に持ち込まれ、引き取りにこず、コンピュータ修理店のオーナーが2019年の6月か7月に勝手にデータを見てわざわざメールを調べ、怪しい証拠を見つけたのに2019年の9月まで警察に通報せず、「仲介者」を通してFBIに通報し、FBIは12月になって初めてコンピュータのデータのコピーを取って一週間後に令状を取って押収したにも関わらずコンピュータ修理店のオーナーはFBIに秘密、もしくは了解を得てデータのコピーを保持し、それを9か月後になぜかトランプの弁護士の弁護士に引き渡したということです。

また、ジュリアーニと共にバイデンを捜査するようにウクライナ政府に圧力をかけて選挙資金法違反で起訴されたレヴ・パルナスによると、この記事に記載されている写真の存在は2019年の5月30日にウクライナ人からジュリアーニに知らされたとのことです。コンピュータ修理会社のオーナーの主張では、2020年8月29日にジュリアーニの弁護士にハードドライブのコピーを渡したということでした。

パルナスによると、ジュリアーニは2018年の後半からパルナスやフルーマンと共に、大統領選挙への出馬が確実視されていたバイデンを傷つける情報を集めようとしていたとのことです。

アメリカ政府の諜報機関は昨年にはトランプに対し、ロシア政府諜報機関がアメリカの選挙に介入するためにジュリアーニを利用していると警告しましたが、トランプは無視しました。

国防アドバイザー、ロバート・C・オブライエンはトランプに対し、ジュリアーニがロシア政府の諜報員に利用されていると疑われる情報を提示しました。この警告は、ジュリアーニがウクライナ議員、アンドリイ・ダーカッチと2019年12月5日に会談したあとに発せられました。ダーカッチはウクライナ議会で親ロシアの立場をとる議員で、財務省が今年の9月に「10年以上にわたりロシアの諜報員として活動している」として制裁リストに加えた人です。