ホーム News トランプ支持者の議会襲撃

トランプ支持者の議会襲撃

0
トランプ支持者の議会襲撃

トランプ支持者が1月6日の選挙人に連邦議会を襲撃し、連邦議員が避難室に避難して警察がバリケード築き、トランプ支持者が窓を割ってドアをたたき壊し、侵入して一人が警察に射殺されるという事態が起こりました。

 

背景

11月3日の大統領選挙でトランプは敗北した後も敗北宣言をするのを拒否して、自分が不正選挙で敗北したという陰謀論を広め、様々な訴訟を起こしたりして支持者を扇動していました。

陰謀論を信じたトランプ支持者はFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアで不正選挙があったという陰謀論の「証拠」を集めはじめ、グループ内で明らかに加工された画像やなんの根拠もない映像や「証言」、陰謀論サイトのリンクなどを拡散させました。

そしてFox NewsやOAN、Newsmaxと言ったトランプ支持者向けのケーブル番組で自分たちの陰謀論を支持する論調に勇気づけられ、トランプ陣営やその他のトランプ支持者の根拠のない訴訟のニュースでますます不正が暴かれてトランプが大統領で居続けるという希望を持ちました。



これらの訴訟が次々と棄却されるたびに彼らの数は増え、ディープステートが司法まで手を伸ばしたと信じ込み、より過激になっていきました。トランプの圧力にも関わらずそれぞれの州での選挙結果が承認され、選挙人投票が行われると、トランプは最後の試みとして共和党の議員が選挙人票の承認を拒否することを期待して、支持者にも議員に圧力をかけるように呼びかけていました。

選挙人制度により、選挙人は州ごとに承認されますが、それらの選挙人票の投票結果は議会で1月6日に開票されます。そして、上院議員1人と下院議員1人が異議を提出した州の選挙人票は議会で投票にかけられます。そして、両院が合意した場合は拒絶することができます。

下院は民主党が支配していますし、上院も共和党の多数党院内総務ミッチ・マコネルを含む複数の議員が反対していたので成功する可能性はありませんでした。しかし、ニュースレターで解説したように2024年の共和党大統領候補になろうとしているジョッシュ・ホウリー上院議員やテッド・クルーズ上院議員がトランプ支持者を自分のもとに取り込むために、選挙人票の承認に反対すると発表してトランプ支持者を喜ばせていました。



支持者に対するトランプの呼びかけ

トランプ自身も12月20日に「統計的に我々が敗北するのは不可能だった。1月6日に大きな抗議活動がある。参加してくれ!」とツイートして支持者に呼び掛けており、トランプ支持者もこれに反応してFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアでワシントンDCで集まろうという運動が拡散されます。

彼らはFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアでワシントンDCへの飛行機のチケットやお勧めのホテルやレストランなどの情報を交換します。中には飛行機では持ち込めない銃などを持っていくためにカープールをするから車のトランクに入れられる銃のサイズや数を話し合っている人たちもいました。

もちろんこれは政治的な運動ですが、トランプを支持するというのは単にある政治家を支持するということ以上の意味を持ちます。彼らはトランプ有名なMAGA帽子以外に服や車のバンパーステッカー、旗などのトランプグッズを集めるなどまるでKPOPアイドルのファンのように献身的なのです。そして、このワシントンDCでの行進は彼らにとっては全国の同じようなトランプ支持者と交流する機会にもなります。スケールの大きい「オフ会」でもあるわけです。

トランプが11時ころに開始した選挙集会で「みんながこれから議会へ行進してくれると思っている」と話すと、ソーシャルメディアなどでリアルタイムでトランプ支持者が連絡を取り合いながら議会に向かいます。

議事堂は議会警察が警備しています。しかし、BlackLivesMatterのデモで見たような厳重な警備ではなく、通常とさほど変わらない警備で、金網と成人男性の胸程度の高さの移動式の柵があるだけでした。

金網は数百人のトランプ支持者が突撃すると重みでひしゃぎ、警官も人数が足りずに圧倒されます。この頃、議員は上院議場と下院議場に分かれていました。

大統領継承順位一位のペンスとペローシがまず退避させられ、その後に議員たちも秘密の安全室に退避させられました。しばらく遅れて国土安全保障省のチームやFBIのSWATなどの応援が来て、3時間後にようやく議事堂の安全は取り戻されましたが、議事堂のドアや窓は破壊され、銅像は汚され、ドアには「メディアを殺せ」などの文字が残されました。

 

その後

議事堂の安全が取り戻された後で、議員たちは選挙人票の承認を終えましたが、大きな課題が残されました。

今回の襲撃事件は議会の警備の甘さを露呈させるものでした。特に議会警察長は度々、議会の警備に問題はないと言っており、十分な準備がありませんでした。今回の事件で上院守衛官と下院守衛官、議会警察長は辞任しましたが、バイデンの就任式への警備体制に不安を残すものでした。

また、今回の襲撃には現職の警官兵士なども参加していた疑いで捜査されています。議会警官の中には暴徒とセルフィーを取ったり、議事堂を案内した者もおり、保安体制に大きな不安を残しています。

また、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアアカウントを削除・停止させられたとはいえ、まだ大統領であるトランプはその気になればいつでも国民に対して声明を発することができます。

下院は「反乱を誘発させた」として弾劾の準備(弾劾にあたる罪についてはココで書きました)を進めていますが、共和党が優勢の上院ではすでに共和党議員らが弾劾に反対しているため、実際にトランプが職をはく奪される可能性は非常に低いです。

 


ブログに加え、より詳細なニュースレターでの解説に興味がある人はPatreonへどうぞ。月600円から毎週一回のニュースレターとパトロン限定投稿などの特典があります。

詳しくは以下のリンクからどうぞ。

Become a Patron!

 


Preview image
America Seiji is creating 日本語での深いアメリカ政治の解説 | Patreon
Become a patron of America Seiji today: Get access to exclusive content and experiences on the world’s largest membership platform for artists and creators.