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マット・ゲイツ下院議員への捜査

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マット・ゲイツ下院議員への捜査

マット・ゲイツの道のり

2016年に選挙に勝利して下院議員になり、議会で最もトランプに忠実な議員として名をはせたマット・ゲイツ下院議員(共和党、フロリダ)が未成年を含む複数の女性に金銭を支払い性的関係を持っていた疑いで司法省に捜査されています。

マット・ゲイツはフロリダ州の政治家、ドン・ゲイツの息子です。彼はロースクールを卒業したあと法律事務所に務めましたが、すぐにフロリダ州議会の下院議員になりました。当時父親は州議会で上院議員を務めており、州議会では「パパ・ゲイツとベイビー・ゲイツ」などと周囲から呼ばれていたようです。

ゲイツはフロリダ州議会での評判はあまりよくなかったようです。2017年のマイアミ・ヘラルドの記事によると、フロリダ州議会ではゲイツを含む何人かの若い州下院議員が「下品な大学生のように」自分の性生活を自慢しあい、ポイント制を作って高得点を競い合っていたようです。

ABC Newsによるとゲイツらはインターンや州議会のスタッフ、同僚などにポイントをつけ、誰と性関係を持ったら何ポイントというようにポイントをつけ、特に「処女」を狙ったと関係者が話しました。POLITICOの記者は2013年の段階でこの「ゲーム」の内容をつかんでおり、彼によるとゲイツらはロビイスト=1ポイント、スタッフ=2ポイント、同僚の議員=3ポイント、結婚している議員=6ポイントとポイントをつけていたそうです。



さて、ゲイツは2016年には父親のフロリダ州上院議席を継ぐつもりでしたが、フロリダ州第一下院選挙区の現職議員が引退を表明したため、連邦下院に立候補しました。

共和党予備選挙では当初はフロリダ州知事のジェブ・ブッシュを支持していましたがすぐにトランプの熱烈な支持者になり、そのまま議会入りします。議会では最もトランプに忠実な議員になり、頻繁にトランプとセルフィーを取ったり、彼をソーシャルメディアでほめたたえたり、保守メディアのFox Newsに出演してトランプをほめたたえたりしました。彼が二回目に弾劾されたときは、議員職を辞してトランプの弁護士になるとまで名乗り出たほどです(ゲイツは20代の頃に2、3年法律事務所で働いただけで憲法の専門家でもなんでもありません)。

Love this president!

Posted by Congressman Matt Gaetz on Monday, June 1, 2020

 

犯罪捜査

CNNの報道によると連邦下院議員になっても周囲に性的関係を自慢していたそうですが、これは品性を疑うものではあっても、犯罪ではありません。しかし、司法省が少なくとも去年からゲイツを児童の人身取引の疑いで捜査していたとニューヨーク・タイムズが報道しました。

タイムズの報道によると、ゲイツと友人関係であったフロリダ州の政治家、ジョエル・グリーンバーグ(35歳のフロリダ州元徴税官)がストーキングでフロリダ州中区連邦検事に起訴されました。しかし捜査の一貫で押収した彼の電子機器から、彼がペーパーカンパニーを通してコロナウイルス対策支援金を不法に入手して暗号通貨を購入したとか、そのために政府の職員を買収したとか次から次へと犯罪を示唆する証拠が出てきました

グリーンバーグは逮捕され、現在21件の連邦法違反で起訴されています。

グリーンバーグの電子機器から出てきた証拠の一つが、彼が未成年の少女と性的関係を持っていたことを示唆する証拠です。彼は政敵人身取引でも起訴されています。ちなみに、人身取引というと誤解されそうですが、法律上、未成年との「援助交際」も人身取引にあたります。なぜなら定義が「対価と引き換えに未成年と関係を持つこと」だからです。

この捜査の一貫で、ゲイツも未成年と関係を持っていたことを示唆する証拠が浮上し、捜査が開始されました。トランプ政権後期に開始されたこの捜査は当時の司法長官、ビル・バーも承認していました。



ニューヨーク・タイムズが複数の関係者から取材したところによると、グリーンバーグは高級レストランでの食事やプレゼントなどと引き換えにデートを希望する人たちをつなげるウェブサイト(日本でいうところの「パパ活」でしょうか)を通して複数の女性と出会って関係を持っていたようです。

捜査官らはグリーンバーグがゲイツにこの女性たちを紹介し、性的関係を持ったとみて捜査しています。グリーンバーグ、ゲイツ両方と性的関係を持ったと話す女性はタイムズの取材に対し、彼らの紹介でフロリダ州共和党員の現在明らかになっていないもう1人の人物とも性的関係を持ったそうです。

ニューヨーク・タイムズはゲイツ、グリーンバーグ両者と関係を持ったと話す女性のCash App(送金・決済アプリ)とApple Payの取引記録を確認しました。

また、2人の関係者によると、ゲイツらは時にセックスの際に違法薬物のエクスタシーを使うこともあったそうです。大人に対してプレゼントを贈ることは違法ではありませんが、薬物を提供して金銭を支払って性的関係を持つことは法律上、「人身取引」にあたる可能性があります。

また、FBIはグリーンバーグが関係を持ったとして起訴されている当時17歳の少女がゲイツとも性的関係を持った疑いで捜査しています。18歳未満の未成年にセックスの対価として、食事、宿泊などいかなるものを提供するのも人身取引にあたり、最低禁錮10年の犯罪です。

マット・ゲイツはこれら一切を否定して「一度もセックスのために金銭を支払ったことはありません」と声明を出しました。また、ゲイツはFox Newsに出演して彼はこの件について、脅迫されており、父親のドン・ゲイツはFBIの捜査に協力していると話しました。

ニューヨーク・タイムズが調べたところによると、確かにゲイツが犯罪捜査の対象になっていることを知っている2人の男性がゲイツに接触し、イランに人質になっているアメリカ人の救出に協力するようにもちかけているということを確認しました。また、タイムズが確認したemailによるとドン・ゲイツはFBIに協力し、FBIはこの件を調べているようです。

ゲイツに接触したこの2人の男性は元空軍情報官のロバート・ケントと不動産デベロッパーで詐欺で服役したスティーブン・アルフォートとです。彼らがどうやってゲイツが人身取引の疑いで捜査されていることをつかんだのかは不明ですが、タイムズの取材に対してケントは「脅迫じゃない。(犯罪捜査されているという)噂が事実ならいいことをしないかと聞いただけだ」と答えました。

 

この記事については補足的な内容をポッドキャストにして公開したので、興味のある方はここから聞けます


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